新都市企画株式会社
事業企画一部
森本 拓治
東急不動産株式会社
住宅事業ユニット 関西住宅事業本部
宮内崇宏 氏
新都市企画
森本 拓治
東急不動産
宮内 崇宏 氏

土地が持つ本来の力を蘇らせた、
高級住宅街のランドマーク・マンション

大阪の上町筋沿いに2019年3月に完成した分譲マンション「ブランズ夕陽丘 ザ・テラス」。これは新都市企画が東急不動産と初めてJV(ジョイントベンチャー)を行った物件である。この土地との出会いから竣工に至るまでのプロセスについて、ほぼすべての工程に関わってきた新都市企画の森本拓治と、東急不動産の宮内崇宏氏に話を聞いた。

老朽化した御屋敷跡地を本来の姿に復活させる。
森本の挑戦がはじまった。

「ブランズ夕陽丘 ザ・テラス」について、新都市企画が東急不動産とJV(ジョイントベンチャー)を行うことを決めたのは、2017年のこと。それよりさかのぼること約1年前の2016年に、森本は本物件の情報を入手した。大阪の上本町は富裕層が多いエリアである。上町筋というメインストリートに面したその土地は、数年来、住人もおらず老朽化した大きな屋敷や庭が放置されている状態だった。しかし、森本にはある直感が働いた。「この土地は共同住宅として復活させるべきだ」。高級住宅街としてイメージの良いエリアの、しかも角地である。「必ず需要がある」と確信した。用地取得のための調査を始めると、時間の要する調整や手続きが立ちはだかった。関係者との話し合いを重ねること約1年。ついに取得に成功した。「この立地と面積なら、ここにふさわしいランドマークとなるようなステータスの高い分譲マンションがいいだろう」。森本はすでに心の中で決めていた。

パートナー企業とは、価値観が共有し合えるまで話し合う。

「ブランズ夕陽丘 ザ・テラス」は新都市企画と東急不動産の初めての共同事業である。森本には、パートナーシップを結ぶ企業との関係性において心がけていることがある。
「どんなコンセプトで、何を重視したモノづくりをしていくのか。そんな価値観や条件が共有し合えるまでじっくり話し合います。」
例え些細な認識のズレであっても、先々のプロジェクトの推進を考えると価値観やこだわりが一致していなければ良い開発はできない。今回のパートナー企業である東急不動産に対しても、森本はそんな姿勢で向き合い続けた。相手が大手デベロッパーであっても、有名な建築設計事務所であっても、妥協はしない。それが新都市企画のスタンスである。

個人の想いが、やがて大手企業の心を動かす。

東急不動産の宮内崇宏氏は本企画を聞いた際、「これは是が非でもやりたい案件だ」と思ったと言う。東急不動産は同エリアでマンションを分譲した実績もあり、両者の「マンションを建てよう」という想いも共通していた。様々な協議の末に、2017年、正式に「ブランズ」と「ザ・テラス」のダブルブランドによる共同事業をスタートさせることになった。森本は東急不動産に対して、こんな期待を抱いていた。「物づくりにこだわりのある、信頼できる会社という印象ですね。マンションだけでなく、ホテルや商業施設など様々な物件を手がけているため応用力もある。この案件もきっと、より良くしようとカスタマイズしながら一緒に開発していけるのではないかと考えました」。また、東急不動産には、マーケティング、企画、法務など各領域の専門家が揃っている。補足的にアドバイスがもらえる点も頼もしかった。
一方、東急不動産の宮内氏は、森本の印象をこう語っている。「このような良い土地を取得するには、専門的な知識はもちろん、人との信頼関係を構築する力や事業を構想する力など、すべてが備わっていないと難しい。同業界の人間として、頭が下がる想いでした」。
また「森本さんは企画段階だけでなく、販売戦略においても的確なアドバイスをしてくれます。知識の広さと深さを感じますね」。
大手デベロッパーは一般的に、用地取得、企画建築、販売など、専門部署に分かれており、場合によっては別会社に業務委託するケースもある。しかし、新都市企画の担当者は、すべての工程に深く関与する。新都市企画らしい森本の仕事ぶりに、宮内氏は新鮮な驚きを感じたようだった。

街のシンボルとなった高級マンションに、
人々の注目が集まる。

両社は、高い品質とデザインを兼ね備えた、当時のエリアではこれまでにない高価格帯のマンション創りにチャレンジしたが、物件は早い段階から購入希望者の関心を集めた。「大きな空き家」の状態からこの土地を見てきた森本にとって、それは感慨深い光景だった。建設の足場が外れて外観が見えた時、『上町筋にシンボリックな建物が生まれた』と実感したという。
東急不動産の宮内氏も、エリアを代表する物件を創りたいとデザインにこだわった。「3層構造にして、タワーマンションのような上に高く伸びるイメージを見せています。エントランスには門構えをつくり高級感を出すことで、差別化できる創りこみをしました」。
また、この物件にニュースへ取り上げられるような話題を持たせたいと、多彩なサービスを付加。入居者が、不要な荷物をアプリを通じて倉庫で保管できるサービスなど、ほかのマンションにはない、東急不動産でも初めての試みを実施。二社の強みが相乗効果を生み、入居者にとって特別な住空間が生み出された。

完成したのは1棟のマンション。
しかし、それはエリア全体の価値向上に。

「ブランズ夕陽丘 ザ・テラス」は2019年3月に無事竣工・引渡しを迎えた。「空き家」の状態では人は集まらない。しかし、分譲マンションの開発を通じて、土地の可能性を引き出し、新たな居住空間として蘇らせることができた。森本はこの仕事が持つ意義を再確認した。
東急不動産の宮内氏も気持ちは一緒だった。大きな通り沿いにある注目度の高いマンションとして、「東急不動産のブランドを向上させる物件となった」と語る。その土地にふさわしい開発を行うことで、その物件に住む人が満足するだけでなく、周りの人の流れや町の印象までも変えることができる。そのことを示す、象徴的なプロジェクトとなった。

「ブランズ夕陽丘 ザ・テラス」
大阪府大阪市天王寺区上本町八丁目303番8(地番)
Osaka Metro谷町線「四天王寺前夕陽ヶ丘」駅から徒歩6分
近鉄大阪線・難波線・奈良線 「大阪上本町」駅から徒歩8分
Osaka Metro谷町線・千日前線 「谷町九丁目」駅から徒歩10分