新都市企画株式会社
事業企画二部
楪葉 文彰
株式会社ティーエーティー
代表取締役社長
田畑 伸幸 氏
新都市企画
楪葉 文彰
ティーエーティー
田畑 伸幸 氏

国際都市「京都」の可能性を示した、
京都駅北側エリアの開発

今、欧米やアジアからの旅行客で賑わう関西圏。特に京都のインバウンド需要は年々増加傾向にあり、時代に対応した新たな街づくりが期待されている。新都市企画は早い段階から、京都駅北側エリアの開発構想に着手。国際都市「京都」の新たな魅力を引き出す「新しいスタイルのホテル開発」に力を注ぐ新都市企画の楪葉文彰と、ビジネスパートナーである株式会社ティーエーティー 代表取締役社長 田畑伸幸氏に今後の展望を聞いた。

京都の宿泊施設に新しい風を。
他にはない魅力を放つ「ホステル」との出会い。

新都市企画では、2019年8月の完成に向け、新たな事業として自社所有型のホテルを建設している。新都市企画として初のホテル事業に取り組んでいるのが楪葉文彰だ。ホテルに注目したのは、現在ビジネスパートナーとして開発をともに手掛ける、株式会社ティーエーティーが京都で運営している「PIECE HOSTEL」に出会ったことがきっかけだった。「街を歩いていると、たくさんの外国人で賑わっている施設がありました。よく見るとそこは修学旅行生専用の旅館を、リノベーションした宿泊施設でした。まさに海外旅行客をターゲットにした、インバウンド需要向きの施設です。即座にこの施設を運営する社長にお会いしたいと思い、知人を通じて紹介してもらいました」。こうした縁から両社は出会い、共同事業としてホテル事業を始めることになった。

新しいチャレンジに不安の声も。
しかし、「絶対に成功させる」という意志が楪葉を突き動かした。

京都駅北側の土地に、新しいコンセプトの宿泊施設を開発する。それは新都市企画として初の試みだった。これまでにマンションの開発は多数手掛けてきたが、ホテルに関する実績はない。そのため当初は代表の北村も慎重であった。ビジネスパートナーとなるティーエーティーも、今回が初めての取引相手。このプロジェクトを不安視する声も少なくなかった。「代表の北村からも本当に大丈夫か、自信があるかと聞かれました。今だから打ち明けますが、正直なところ、やってみないとわからない部分もあった。それでも様々なリスクヘッジプランを用意し、できない理由ではなく、できる理由を積み上げました。最後は、想いの強さで、周囲を説き伏せた感じです(笑)」。楪葉をそれほどまでに突き動かしたもの。それは田畑氏の事業センスに対する、絶大なる信頼だった。その「信頼」はやがて、新事業を成功させるための大きな推進力となっていった。

ティーエーティーが運営するホテルの魅力。
それは旅行者の目線にたった空間づくり。

ビジネスパートナーのティーエーティーが運営している「PIECE HOSTEL」は、現在、京都で3店舗を展開している(2019年3月時点)。一般的なビジネスホテルとは異なる「独創的なアイデア」で、インバウンド需要の取り込みに成功している。インバウンド需要が増している京都とは言え、特徴がないホテルや、駅から少し離れた利便性の悪いホテルは稼働率が伸び悩んでいる。しかし、「PIECE HOSTEL」は当初の単価設定を崩すことなく、高い稼働率を誇っている。ホテルとしてのこだわりを守りながら、かつ合理的に採算が取れる事業構造を成立させる。それこそが楪葉の目指している宿泊施設だ。「ティーエーティーはポジショニングと、ゲストの体験感度を高めるということを大切にしています」と田畑社長が言う通り、京都・三条の「PIECE HOSTEL」は欧米の旅行者向けに「部屋はコンパクトに抑え、共有部分を広めに確保し、宿泊者同士の交流を重視するスタイル」をとっている。一方、京都駅南側にある「22PIECES」はアジア圏のファミリーを対象に、キッチンスペースを用意し、部屋の中でくつろげるような空間になっている。これから新都市企画が開発を進めていく京都駅北側の2つのホテルは、「近隣のホテルとは一線を画す、独創的な宿泊施設になると思います」と楪葉は自信をのぞかせている。
土地を購入した当初は、ホテル開発の経験が乏しいこともあり、一般的なビジネスホテルプランを描いていたという。しかし、ティーエーティーの田畑氏に相談したことで、客室と共用部分のメリハリを利かせたプランとなり、収益性も高まり、土地を買った時の収支計画よりも利益を生み出せる計画に変更できた。
「地上1階と地下1階を吹き抜けとし、そこに大階段を設けるプランは田畑さんの強い拘りで、魅力的な共有スペースづくりが現実的なものとなってきました」。(楪葉)
田畑氏の的確なアドバイスにより、ホテルのスタイルも固まった。個室の内装はシンプルに、そして2フロアある共有部分を豪華にする設計だ。

ティーエーティーから見た新都市企画の魅力は、
一人がすべての責任をもって動けること。

ティーエーティーの田畑氏も、新都市企画との仕事に新鮮な喜びを感じている。「土地を購入する段階から、事前に相談をしてくれたので、背景や想いを理解しながら参加することできた。私たちの考え方も尊重してくださる姿勢を感じました」。物件の価値を高めるのは当然のこと。さらに「世界レベルで通用するホテルをつくろう」という気持ちが一致しているから良い仕事ができる。ティーエーティーも想いを共有できるパートナーとして新都市企画に厚い信頼を寄せている。時に他のデベロッパーからも、同さまの相談を持ち掛けられることもあるが、新都市企画の楪葉には「運営後を見る長期的な目線がある」と田畑氏は絶賛する。「様々な方にお会いしますが、楪葉さんは情報収集力や業務推進力が非常に優れていると感じます。常に広い視野からどれがベストなのかをチョイスできる。特に土地の情報収集に関しては私たちではできないこと。」
また、「開発推進者の一人にすべての権限と責任が委譲されている点」も信頼できる大きな要因となっている。新都市企画ならでは「社員一人ひとりに任せる組織体制」も、田畑氏とのビジネスにおいてプラスに働いているようだ。

北側エリアのイメージを変える開発が続々と進行中。

開発中のホテルは、2019年8月、京都駅から250mほど北の七条通に面した場所に完成予定である。スタイルは「PIECE HOSTEL」に近いが、京都駅から近いこともあり、インバウンドだけでなくビジネス需要も見込めるという。ティーエーティーにとっても、新しいブランドとなる。ホテルの名称はこれから両社で一緒に考えるようだ。
さらに、京都北側エリアの開発構想はここだけに終わらない。「京都駅北側エリアに計4か所の土地を取得できました。ホテルの近くに商業施設を造ることで、宿泊客を促すことができ、相乗効果も狙えます」。
いま、新都市企画では京都北側エリアの本格的な開発構想が固まりつつある。建築中のホテルの近隣で、オフィスや異なるタイプの宿泊施設、飲食などができる商業施設等を予定している。
「訪れる人に、連続性のある楽しい体験を提供したいと考えています。これから京都駅周辺の姿はどんどん変わっていくと思います。新都市企画ならではのユニークな挑戦をもっともっとしていきたいですね」。
楪葉は更なる目標の実現に向けて、確かな一歩を踏み出し始めている。

写真撮影:繁田諭